【レビュー】イヴの迷宮(上)著ジェームズ・ロリンズ

『ブレードランナー 2049』が楽しみすぎて夜も眠れないから深夜にブログを更新するシナリオライター・原野伊瀬です。

SFやテクノスリラー、オカルトが好きな私が今回レビューするのは竹書房から出ている『シグマフォースシリーズ』の第10弾。

『イブの迷宮(上)』
著……ジェームズ・ロリンズ
訳……森田 健

「Σフォース? ナニソレ、新しいガンダム?」っていう方はよろしければこちらをどうぞ!

https://paranoise.jp/drawer/post-155

さて、今回の物語は主人公たちΣフォースの表の顔であるスミソニアン協会が大規模なハッキングを受けたことから始まります。
相手はかの有名な人民解放軍のサイバー部隊!

昨今は巨大な中国市場を意識してか、ハリウッド映画でもあまり悪役として描かれる事が少なくなった中国が今回の敵役です。
(※昔は敵側にかならず一人は謎の功夫使いって居た気がしますけど、今は博士とか投資家とかインテリ役が多いですよねー)

彼らハッカー部隊の目的はDARPA(国防高等研究計画局)が出資している『BRAINイニシアチブ』という、米政府主導の脳研究に関するデータを奪うことでした。

少し話はそれますが、まさかここでまたこの名前を目にするとは思いませんでした。
というのも以前、制作にかかわっていた『ちぇ~んじシリーズ』という作品を執筆中にこの『BRAINイニシアチブ』というものを調べた事があったので、読んでいてテンション上がりました!

「いくらコネクト社の技術がスゲーって言っても、人間の脳の解明なんて未来の夢物語にしか聞こえないぞ?」
「ところがぎっちょん、弊社以外にも米国の『BRAINイニシアチブ』やEUの『ヒューマン・ブレイン・プロジェクト』と言った具合に現在進行系でホットな研究対象ですっポ」

“Brain Research Through Advancing Inovative Neurotechnologies(革新的な神経科学を進めることによる脳研究)”
『アポロ計画』や『ヒトゲノム計画』に匹敵する科学プロジェクトとして米国では位置づけられていて、オバマ大統領(2013年当時)が年間1億ドル、ポンと出しました。2016年から10年間で45億ドル拠出する事も決まっているそうです。
(量子コンピュータの研究に32億円とか言ってるどっかの国とはえらい違い……)

「マジかよ……オレ、実は未来に生きてるの? それじゃコネクト社の研究にも政府が関わってるのか?」
「ポっポっポ! ほとんど文系しか居ないこの国の小役人と政治屋に科学の重要性を説くより、チンパンジーに九九を教える方が遥かに楽チンですポね!」
「……ぽ、ポメちゃん、目が笑ってない」

さて、話を戻します。
『ちぇ~んじ』の真の目的は”コネクトーム”と呼ばれるシナプスの全接続マップの作成でしたが、『イヴの迷宮』で中国人達が狙っていたのは化石人類のDNA研究でした。

人類の進化において今から約5万年前を境に急激に知能が発達したと言われていて、この本ではヒト属による混血の結果、知性のDNAというべきものを獲得した集団がその他の人類を導いた可能性を示唆しています。
(知ってる! 雑種強勢はチートって、東京喰種でもやってた!)

そこで出てくるのがネアンデルタール人とホモ・サピエンスのDNAを組み込まれた天才ゴリラ――バーコです。
(あかん! その研究、最終的に猿の惑星(リメイク版)みたいになりそう!)

今回の物語のヒロイン(男の子ですけど)は間違いなくバーコでしょう。
別書体で動物の内面描写を書くという演出は、『Σフォースシリーズ』のスピンオフ作品『タッカー&ケインシリーズ』でも使われていますが、実験動物や中国の劣悪な環境で飼育されている動物の心情をバーコに仮託して描写しているのは、元獣医の作者ならではだと思います。

そしてそんなゴリラとバディを組むのがジョー・コワルスキです。
これまでのシリーズ作品ではドンパチ専門だった彼がバーコとの交流を通して新たな一面を見せるのが、本著の見どころの一つではないでしょうか。
過去にアンケートで”好きな男性キャラ”にコワルスキ、女性キャラにセイチャンを選んだ私としても大満足!
(ロリンズ先生、これを気に『ジョー&バーコ』もやりません?)

また、優れた知性を持った異種のヒトの存在を遥か昔の17世紀に突き止めていた人物の名前も出てきます。
“イエズス会のレオナルド・ダ・ヴィンチ”とも言われるアナスタシウス・キルヒャー神父。
地質学者でもあった彼が発掘した現生人類のものとは形を異にする”アダムの遺骨”は中国人に奪われてしまいますが、神父が遺した手がかりを頼りに我らが主人公グレイとすっかりツンデレヒロインになったセイチャンが”イヴの遺骨”を求めて遺跡を冒険します。
(シスター服でダガーナイフとか、完全にギャルゲのヒロインじゃないですか! いいぞ、もっとやれ!)

果たして、アダムとイヴの遺骨には本当に”知性のDNA”が眠っているのか!?

下巻が気になるので、今日はこのへんで!

スポンサーリンク